なかなか天候がカラッとならないこの夏ですが、8月11日・12日の雲上の世界は夏山らしく楽しませてくれました。
笠ケ岳<標高2897.8m>
日本百名山にして県境を共有しない飛騨だけの山。乗鞍岳が大きな山塊で、剣ケ峰を人に教えることが難しいのにくらべ、笠ケ岳は飛騨山脈のつらなりに属しながらもはっきりそれと分ります。子供の頃、まだ国道41号線がバイパス工事を行っており、雪におおわれた田畑がまるで白い平原のようだった風景に笠ケ岳は立っていました。まだ登山など経験のなかった少年時代のわたしにとっても笠ケ岳は心を打つ山でした。
笠ケ岳へは笠新道を使い登りました。
8月11日(月)6:00 新穂高登山者用駐車場を出発。前日は日曜だったこともあり、路肩やすき間に無理やり駐車をしている車が多くありましたが、この日には本来の駐車スペースは空いていました。
まだ涼しい左股林道を歩き、テントを担いだ学生と思われるパーティーに何組か出会いました。女の子が多いのに驚きました。
引率された高校生らしきパーティーも。時間から見て、わさび平(多分キャンプ場)に泊まって下山してきたのでしょう。
蒲田川の水量は多く、陽射しを浴びて水面から水蒸気があがっていました。
笠新道入山口 7:10
標高1700mを越えると、樹林帯を抜け穂高連峰が見えてきました。
1900mあたりまでは数週間前に登っていました。
この時は偵察のつもりでしたが、実はここからが大変なことがよく分っていなかったと言えます。
まず陽射しがまともに当たり、すでに大量の汗をかいていました。
やがて2100m過ぎから霧が深くなり始め、今度は身体が冷えてきました。
寝不足とシャリバテも感じるようになりました。
だましだまし杓子平の稜線が見える所まで来ると、そこはニッコウキスゲのお花畑でした。
高山植物はバテた登山者に元気をくれます。
お花畑の斜面をジグザグに登り、潅木の間をぬけると杓子平に着きました。
深い霧でその様子は分りません。
昼食を兼ねた休憩で一息ついたあと、右側の斜面をトラバースするように下りました。
やがて霧の中に見えてきた前方の岩山を目指し、杓子平のなかを横断しました。
岩山の近くまで来ると右へ折れ急登が始ります。
途中振り返ると、杓子平が見えていました。
先がよく見えないこともあって、抜戸岳の尾根に着くまで長く感じました。
尾根を下り、双六岳との分岐に。笠ケ岳へは左に折れます。
深い霧で、すでに見えるはずの笠ケ岳が確認できませんでした。
こんな時は、いつ着けるのか少々不安になります。
抜戸岩を通過し、さらに稜線を進むと、左手に緑の笠が見えてきました。
このあたりから前方にテントが確認できるようになり、小笠と山荘が霧の中から現れました。
笠ケ岳山荘で荷物を下ろし一息。
霧が晴れるのを待ちましたが諦めて、5時半からの夕食に間に合うように、笠ケ岳頂上へ出かけました。
予想はしていましたが展望はまったくありません。
祠にある賽銭箱に千円札を奮発し、播隆上人にごあいさつ。
そのあと左手にある頂上へ向かうと、突然霧があがり始めました(さっそく御利益!?)。
下には雲海が広がり、穂高連峰が姿を現しました。
雲海に浮かぶ西穂高の稜線。右下の台形の岩山が独標です。
そこから左へぎざぎざの稜線が西穂高山頂へ続いています。
さっき歩いてきた抜戸岳からの稜線と遠くに槍ケ岳が見えています。
登ってきた甲斐がありました。
笠ケ岳は夏でも比較的静かな山行が楽しめます。
北アルプスの角っこから全体を見渡すような感じがしました。
大変だけどまた登りたい飛騨の名山です。