登山遭難の本
ここ何日か、暇を見つけて読んでいた本がこの2冊。楽しいはずの登山ツアーを企画するものにとって、あまり強調するのはどうかという思いもあるにはありましたが、やはりご紹介しなくてはと考えました。
どちらもテーマは遭難です。
わたしも含めて登山愛好者は避けて通りたいテーマです。特に初心者やこれから登山を始めたいと思っている方にとって、本屋の書棚に並んでいても手に取るのは気が向かないことでしょう。・・・正直、わたしもツアーを企画する立場でなければ読もうと思わなかったかもしれません。
しかし滑落や道迷いなどの遭難は確実に増えており、「山の遭難・生きた還った」(永田秀樹編・東京新聞出版局)によると2003年の遭難発生件数は1358件、遭難者1666名、死者・行方不明者230名以上と言います。1日に約4件の遭難が日本のどこかの山で発生していることになります。
5年後の今もこの数は増加しており、2007年の遭難件数は1417件、遭難者数1853名、死者・行方不明者は278名です。(警察庁「山岳遭難の概要」)
前述の「山の遭難・生きた還った」は、遭難のさまざまな事例の中から危機的状況から帰還することができたものを取り上げ、いかにして乗りきることができたかを検証しています。
事例の中には軽いハイキング程度となるはずだったものが、道を誤りさらに地図を持っていなかったために12日間も山中をさまよう羽目になった、登山愛好者の誰にでも起きそうなものもあります。
ある程度の経験を積んだ人にとっても、本書の「セルフレスキュー」という提案は参考になるでしょう。
これを読んだら登山が恐くなると言うことはなく、登山への強い気持ち(心構え)が生まれてくると感じました。
もう一冊は、気象を原因とする遭難を取り上げた「ドキュメント気象遭難」(羽根田治著・山と渓谷社)。先日起きた白馬岳大雪渓の崩壊事故のように、気象による自然現象が時に重大な遭難事故を発生させます。年末に起きた槍平小屋での雪崩事故も記憶に新しいところです。また山では雷が発生しやすく、雨を避けたつもりの林の中で落雷に遭うこともあります。
こうした気象遭難を避けるには、気象予報を役立てることが重要ですが、判断を誤ることもあり事故が耐えません。本書は綿密な取材等により、迫真のドキュメントで構成されています。
行動のどの時点で決断をするべきだったか、もしその立場になった時の参考になるでしょう。
これらは登山初心者はもとより、十分な経験者にも読んでおいてほしいと思いました。もちろん登山ツアーの企画にも多いに役立てたいと考えています。